後期高齢者医療制度がスタートし、約1カ月。新制度の柱の一つ、「後期高齢者診療料」に反対する動きが全国20以上の府県医師会に広がっている。厚生労働省は鎮静化に躍起で、日本医師会も同診療料の導入を認めた手前、「身内」の説得に乗り出しているが、地方の反乱はやみそうにない。
「高齢者の医療を制限する萎縮(いしゅく)医療だ」。反対派の急先鋒(せんぽう)、茨城県医師会(原中勝征会長)は後期高齢者診療料にとどまらず、新制度自体の撤廃を求めている。15日の関東甲信越医師会連合会で原中氏は、反対運動への協力を訴えた。
新制度で厚労省は、糖尿病などの慢性病を抱える75歳以上の人を、かかりつけの「高齢者担当医」に診察させる方針を打ち出した。患者の年間治療計画を作成し、継続的に診察した担当医は月に1度、後期高齢者診療料(月6000円、患者の負担は原則600円)を算定できる。ただ、一部の検査や治療は何度しても6000円しか払わない「定額制」で、その狙いは過剰診療をなくし、12兆円に及ぶ老人医療費を抑えることにある。
ただ、複数の地方医師会は「必要な治療をしない利益優先の医師が現れる」との危惧(きぐ)を表明。愛知、大阪、兵庫などの各府県医師会も会員に自粛や慎重な態度を求める通知を出したほか、下部組織の郡市医師会単位でも拒否が広がっている。
地方医師会は、高齢者担当医が同診療料を算定すれば、他の医療機関が同じ患者を診ても、同診療料を請求できない点にも強く反発している。医師による患者の囲い込みが進み、患者から自由に医療機関を選ぶ権限を奪う、というわけだ。
これに対し、厚労省は「後期高齢者診療料を算定するかしないか、患者がどこの医療機関にかかるかは自由。誤解に基づく反対だ」(保険局医療課)と説明しているが、27日の衆院山口2区補選で自民党候補が敗れた要因の一つは新制度にあるとみなされ、与党内に制度見直し論が起きていることも同省への逆風となっている。【吉田啓志】 (平成20年4月29日付 毎日新聞)
所詮この「長寿医療制度」と名称を変えたところで中身は何ら変わらず、75歳以上になった老人は満足な医療を受けずに死んでください、と、言葉は大変悪いですがそういう制度です。
医療費の抑制と言っている時点でもう制度設計からおかしなことになっているのです。これのどこが「いい制度」なのか、誰か政治家が説明してくれないでしょうか。誰も説明できないでしょう。だって、医療費を抑えることが目的になっているのだとしたら、医療費を抑えるために高度な医療を必要とする、特に高齢者の医療の質が落ちるのは自明の理であります。
高齢者になるほど医療費が莫大にかかってしまうのは仕方ないこと。人間年を取ればそれだけ病気になるリスクは高くなるのだから、無理もない。ですが、現役で働いている人ならともかく、年金でしか収入源がないお年寄りにまで負担を求めるのはおかしな話ではないかと思います。
年金の記録漏れ問題も解決していないうちにこの制度、しかも保険料は年金からの天引き。年金をもらえていない人に対しても保険料を徴収する。何もかもが矛盾しています。扶養家族に入っていたのに突然切り離されて、保険料を払え、税金を払えって。国民の生活安定のために働くべき国が、国の安定のために、国民の最低限の生活さえも奪う気なのか。とても絶望的な気分になってしまいます。
山口補選で民主党候補が勝利しましたが、自民党の敗因はまさにこの医療制度の欠陥にあり、長年自民党を支持してきた高齢者でさえがこの制度にNOを突きつけたのです。自民党も政府もこの事実を真摯に受け止めて、制度の見直し、廃止を検討しなければ、ますます国民の支持は離れるということを肝に銘じていただかなければならないと思います。
厚生労働省はこのほど、75歳以上の高齢者を対象にした後期高齢者医療制度(長寿医療制度)の“メリット”を解説した「長寿医療制度でここがよくなる!!」と題する4ページの資料を作成し、各都道府県の担当者に送付した。資料では、「ご安心ください。今までと同じ医療を受けることができます」と繰り返し強調し、医療関係者の連携によるきめ細かな訪問診療や、退院前後のサポートの充実などをアピールしている。
資料では、在宅、入院、外来の各医療などに分けてポイントを解説。在宅医療については、「住み慣れた自宅で自分らしい生活を送りたい人には、多様できめ細かな訪問診療を提供します」と説明している。しかし、急に病状が悪化した場合には、「あなたの病状をよく分かっている病院」に入院できるとしている。
入院医療については、「安心して退院できるように、退院前後の医療・福祉のサポートが充実する」とした。今年度の診療報酬改定では、長期入院している高齢者を自宅に戻すことを評価する「後期高齢者退院調整加算」が新設されたが、「医療が必要な高齢者を追い出す」との批判もある。資料では、こうした批判に直接答えず、「医療・福祉のサポート」という表現で理解を求めている。
外来医療では、後期高齢者の主治医(高齢者担当医)の役割を赤い文字で強調。「希望すれば、こうした医療の流れ(在宅医療、緊急入院、退院調整)をあなたの選んだ担当医が継続して支えてくれます」とした。
今年度の診療報酬改定で、厚労省は高齢者への重複投薬や重複検査などが医療費を圧迫しているとして、高齢者の受診を総合的に管理する主治医が受け取る「後期高齢者診療料」を創設したが、「自由な受診(フリーアクセス)を抑制する」との批判が絶えない。
高齢者担当医制度について、資料ではQ&А方式で解説。「医療が制限されることはなく、必要な医療はこれまで通り受けられます」「病状に合わせて、いつでも好きな病院に行くことができます」「患者さんの希望で、いつでも担当医を変更できます」などと回答している。(平成20年4月22日付 医療介護情報CBニュース)
厚生労働省はこんな「きれい事」を書いていますが、そんなに甘くはありません。ただでさえ医者の負担が多く医者を辞めてしまう人もいると言っているのに、専門医やかかりつけ医制度が事実上体をなしていないような状態で、患者が自由に医者や病院を選べるような環境が完全に整っているとは思えません。「木を見て森を見ず」政府や厚生労働省はもっと実態をよく見てください。机上で議論して決めたところでそれがいい制度かどうかなんて分かるはずがないのです。
【参考】
厚生労働省「”長寿医療制度”が始まりました」